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スマート保安とは?IoTを活用した設備監視をわかりやすく解説

2026.10.22

製造現場や電気設備の保安では、設備の安全性を確保しながら、点検・監視業務を効率化していくことが求められています。
こうした課題への対応として注目されているのが「スマート保安」です。
スマート保安では、IoTやAIなどの新しい技術を活用し、設備の状態をデータとして収集・監視することで、安全性や保安業務の効率性を高めていきます。
ただし、スマート保安は単に設備をIoT化すれば実現できるものではありません。
設備の状態を把握するためには、「何を計測し、そのデータをどのように保安業務に活用するか」が重要です。

本記事では、スマート保安の基本的な考え方から、IoTを活用した設備監視の仕組み、電気保安で監視されるデータについてわかりやすく解説します。
また、変圧器の状態を把握するための「負荷電流監視」と、それを実現する電力量計の活用についても紹介します。

この記事からわかること

  • スマート保安の意味と必要とされている背景
  • IoTを活用した設備監視の仕組みと主な監視項目
  • 変圧器の負荷監視と電力量計の活用方法

スマート保安とは?

スマート保安とは、安全確保を第一としながら、IoTやAIなどの新しい技術やデータを活用し、産業設備の安全性向上や保安業務の効率化につなげていく取り組みです。
経済産業省では、技術革新やデジタル化、少子高齢化・人口減少などの社会構造の変化に対応するため、官民が連携してスマート保安を推進しています。
先進事例の公開や技術実証への支援なども行われており、産業保安分野におけるデジタル技術の活用が進められています。
従来の保安業務では、担当者が定期的に現場へ行き、設備を見たり、計測値を確認したりして設備状態を把握する方法が一般的です。
スマート保安では、こうした人による点検と設備から取得したデータを組み合わせ、設備状態の把握や保安業務の判断に活用していきます。

例えば、

  • 設備の常時監視
  • 設備状態の遠隔確認
  • 計測データの記録・蓄積
  • 蓄積したデータの活用

などを組み合わせ、保安業務に役立てます。

つまりスマート保安では、単に設備監視をデジタル化するのではなく、取得したデータを設備の状態把握や保安業務の判断に活用していくことが重要になります。

スマート保安が必要とされる背景

産業設備の保安を取り巻く環境は大きく変化しています。
設備の高経年化に加え、保安業務を担う人材の高齢化や人手不足、技術・技能の継承などが課題となっています。
こうした課題に対応しながら安全性を維持・向上していくため、IoTやAIなどの新しい技術や設備データを保安業務に活用する「スマート保安」が推進されています。
スマート保安は、すべての点検業務を人からシステムへ置き換えることを目的とするものではありません。
設備を遠隔・常時監視してデータを記録し、異常や状態変化を把握することで、現地点検と組み合わせながら保安業務の高度化・効率化につなげていく考え方です。

点検・監視業務を効率化できる

従来の巡回点検では、担当者が定期的に現場へ行き、設備状態や計測値などを確認・記録します。
しかし、管理する設備や拠点が増えるほど、現場への移動や確認作業による負担も大きくなります。
設備の状態をデータとして取得し、遠隔から確認できる環境を構築することで、現地で行う点検を補完し、点検・監視業務の効率化につなげることができます。
なお、遠隔監視機器を導入するだけで、自動的に点検頻度を変更できるわけではありません。
実際の運用では、対象設備の条件や保安規程、制度上必要となる手続きなどを確認する必要があります。

設備の状態をデータとして把握できる

IoTを活用した設備監視では、センサや計測機器から取得したデータを継続的に収集できます。
現地で確認した時点の状態だけではなく、設備データを継続して収集することで、設備状態の変化や傾向を確認するための情報として活用できます。
「今、異常が発生しているか」だけではなく、設備がどのような状態で使われてきたのかを把握できることも、データを活用するメリットです。

電気保安では何を監視する?

スマート保安では、1種類のデータだけですべての設備状態を判断するわけではありません。
電気設備では、安全に関わる異常だけでなく、設備の状態・運転・周囲環境などを複数のデータから捉えます。

絶縁・漏電

電気が本来の経路以外へ漏れていないかなど、設備の絶縁状態を監視します。
絶縁や漏電に関する情報は、絶縁状態の変化や漏電などの異常を把握するためのデータとして利用されます。

負荷電流

変圧器や回路に流れる電流を計測し、設備の負荷状態や継続的な過負荷を把握します。
負荷の状態を継続して確認することで、「どの程度の負荷で設備が使用されているのか」を把握するためのデータとして利用できます。

温度

変圧器や接続部、盤内などの温度を監視します。
温度データは、設備や接続部などに異常な温度上昇が発生していないか確認するために利用できます。

設備・接点

開閉器や遮断器、警報、設備の運転状態なども監視対象になります。
例えば、運転・停止などの接点情報を収集することで、離れた場所から設備の状態を確認できます。

外観・環境

電気的な計測データだけではなく、カメラ、浸水、煙、周囲環境などの情報も設備状態を把握するために利用されます。

このように、スマート保安では特定のセンサや計測データだけに頼るのではなく、設備や監視目的に応じて必要なデータを取得し、設備状態を把握するための判断材料として活用することが重要です。

スマート保安におけるIoT設備監視の仕組み

IoTを活用して設備を監視する場合、設備からデータを取得してから実際の保安業務で活用するまでには、複数の機器やシステムが関わります。

基本的な役割は、

計測 → 収集・通信 → 上位システム → 運用

と分けて考えるとわかりやすくなります。

1.設備の状態を計測する

まず、監視したい設備から必要なデータを取得します。

例えば、

  • CTによる負荷電流
  • ZCTによる漏電・絶縁監視に用いる情報
  • 温度センサによる温度
  • 接点による設備状態

などがあります。

スマート保安では、IoTゲートウェイやクラウドなどの監視基盤だけでなく、設備の状態を把握するためのデータを取得する「計測」の部分も重要です。
まず、「どの設備から、どのようなデータを取得するのか」を考える必要があります。

2.計測したデータを収集・通信する

計測したデータは、絶縁監視装置やPLC、ゲートウェイなどで収集し、通信によって上位システムへ送ります。

3.監視システムで活用する

収集したデータをクラウドや業務システムなどへ連携することで、設備データの可視化や警報、点検判断などに活用します。
つまり、 
計測機器で設備の状態を捉える→データを収集・通信する→上位システムで監視・活用する
という流れです。

すでにIoTゲートウェイやクラウドなどの監視基盤を構築している場合には、システム全体を入れ替えるのではなく、必要な計測機能だけを追加するという考え方もできます。
既存システムの通信仕様や接続条件を確認したうえで、必要な計測機能を追加する構成を検討できます。

なぜ変圧器の負荷電流を監視するのか?

電気保安で監視するデータのひとつが、変圧器の負荷電流です。
変圧器の負荷監視では、変圧器が「どの程度の負荷で、どれだけ継続して使用されているのか」を把握します。

変圧器の負荷状態を把握する

変圧器ごとの電流を継続的に監視することで、現在どの程度の負荷で使われているのかを把握できます。

継続的な高負荷を捉える

電流は設備の運転状況によって変動します。
負荷電流を継続して監視することで、一時的な変動と長時間続いている高負荷を区別するための情報として利用できます。

現地確認の優先順位を判断する

複数の設備を管理している場合、負荷データを設備確認の判断材料として活用できます。
負荷データを設備状態の確認における判断材料のひとつとして活用することで、現地確認の必要性や優先順位を検討する際の参考にできます。

設備の更新・増設を検討する材料になる

継続して取得した負荷実績は、設備の更新や増設を検討するときの判断材料としても利用できます。

このように負荷電流は、省エネルギー管理だけではなく、変圧器の負荷状態の把握や保安業務における判断材料としても活用できるデータです。

変圧器の負荷監視では継続的なデータの把握が重要

変圧器の負荷状態を監視する場合、ある瞬間の電流値だけでなく、一定時間の電流を平均化して捉えることが重要です。
設備の起動などによって一時的に電流が大きくなることがありますが、瞬時的な変動と継続的な高負荷では意味が異なります。
そのため、変圧器の負荷監視では、電流を継続的に計測し、一定時間の平均値や最大値などを確認することで、負荷の状態を把握しやすくなります。

瞬時電流とは

瞬時電流は、その時点の電流値です。
設備の起動などによって短時間だけ電流が大きくなった場合も、その変化を捉えます。
一方で、瞬間的な電流値だけでは、一時的な変動なのか、継続的に高い負荷がかかっているのかを判断しにくい場合があります。

平均電流を監視に活用

一定時間の電流を平均化することで、瞬時的な変動の影響を抑えながら負荷状態を確認できます。
変圧器の負荷監視では、平均電流に加えて最大値なども確認することで、負荷の上昇や継続的な高負荷を把握するための判断材料として活用できます。

負荷電流監視に活用できる電力量計

渡辺電機工業の「WMS-PE2シリーズ」は、変圧器の負荷監視に対応する電力量計です。
WMS-PE2シリーズは、CTで負荷電流を計測し、変圧器の負荷状態を把握するためのデータとして活用できます。
また、DO警報やModbus RTUによって既存装置やゲートウェイへ連携する構成が可能です。

電力・積算電力量も取得

WMS-PE2シリーズでは負荷電流だけではなく、電力や積算電力量なども計測できます。
そのため、変圧器の負荷状態を監視するとともに、使用電力や電力量の把握にも利用できます。

DO警報で既存装置と連携

WMS-PE2シリーズのDO付き仕様では、警報出力に対応しています。
監視する値に応じた警報を外部機器へ出力することで、既存の監視装置と組み合わせた構成を検討できます。

Modbus RTUで計測データを連携

WMS-PE2シリーズは、Modbus RTUに対応しており、Modbus RTUに対応したゲートウェイなどと接続することで、負荷電流や電力などの計測データを上位システムへ連携する構成を構築できます。

WMS-PE2シリーズを活用することで、既存のスマート保安システムに、変圧器の負荷状態を把握するための計測データを追加できます。

既存のスマート保安システムを活かして負荷監視を追加

すでにスマート保安に取り組んでいる場合、絶縁監視装置や収集装置、IoTゲートウェイ、クラウドなど、設備を遠隔監視するための仕組みが構築されているケースがあります。
そのような場合でも、変圧器の負荷監視を追加するために、必ずしも既存のシステム全体を入れ替える必要はありません。
既存の通信・監視環境を活かしながら、変圧器の負荷状態を把握するための「計測機能」を追加するという方法があります。
スマート保安システムは、大きく分けると「計測」「収集・通信」「監視・活用」という役割で構成されます。
すでにIoTゲートウェイやクラウドなどが「収集・通信」「監視・活用」の役割を担っている場合、その前段に計測機器を追加し、変圧器の負荷電流を計測する構成を検討できます。
既存システムの通信仕様や接続条件によっては、既存の監視基盤を活かしながら、必要な計測機能を追加することが可能です。

スマート保安に関するよくある質問

スマート保安に関するよくある質問を紹介します。

スマート保安とは簡単にいうと何ですか?

スマート保安とは、IoTやAIなどの新しい技術とデータを活用して、産業設備の安全性と保安業務の効率性を高めていく取り組みです。
人による点検をすべて置き換えるのではなく、設備の常時監視や遠隔確認、データ活用などを組み合わせて保安業務に役立てます。

スマート保安ではどのようなデータを監視しますか?

設備によって異なりますが、電気保安では絶縁・漏電、負荷電流、温度、設備・接点、外観・環境など、複数の情報を設備状態の把握に利用します。

変圧器の負荷電流を監視する理由は何ですか?

変圧器の負荷状態や継続的な高負荷を把握するほか、現地確認の優先付けや、設備の更新・増設を検討するときのデータとして活用できます。

変圧器の負荷監視で平均電流を確認するのはなぜですか?

設備の起動などによって、一時的に電流が大きくなることがあるためです。
一定時間の電流を平均化することで、瞬時的な変動の影響を抑えながら負荷状態を確認できます。
平均電流や最大値などを継続して確認することで、負荷の上昇や継続的な高負荷を把握するための判断材料として活用できます。

まとめ

スマート保安とは、IoTやAIなどの新しい技術と設備データを活用し、産業設備の安全性と保安業務の効率性を高めていく取り組みです。
IoTを活用した設備監視では、ゲートウェイやクラウドだけでなく、設備から保安判断に必要なデータを取得する「計測」の部分も重要になります。

特に変圧器では、負荷電流を継続的に計測することで、

  • 変圧器の負荷状態
  • 継続的な高負荷
  • 現地確認の優先付け
  • 更新・増設を検討するための負荷実績

などを把握するためのデータとして活用できます。

渡辺電機工業のWMS-PE2シリーズでは、CTで負荷電流を計測し、変圧器の負荷状態を把握するためのデータとして活用できます。
また、Modbus RTUによる通信やDO警報にも対応しています。
そのため、新たにスマート保安システム全体を構築するだけでなく、既存の監視システムを活用しながら、変圧器の負荷監視機能を追加するための計測機器としても活用できます。
変圧器の負荷監視や、既存のスマート保安システムへの計測機能の追加をご検討の際は、変圧器の負荷監視に対応したWMS-PE2シリーズをご活用いただけます。
システム構成や計測方法についても、お気軽にお問い合わせください。

監修者情報

渡辺電機工業マーケ担当

渡辺電機工業株式会社 マーケティング担当。IoT・遠隔監視ソリューションの情報発信を担い、工場・ビル・インフラ設備における遠隔監視システムの導入事例や最新技術トレンドを幅広く発信。現場の声をもとに、設備管理の効率化・リスク低減に役立つ情報を技術者から導入検討者まで幅広い読者へわかりやすく届けている。

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