
工場では設備ごとにデータが分散しているため、設備全体の稼働状況や電力使用量をまとめて把握することが難しいこともあるでしょう。
Modbusを活用すると、PLC(シーケンサ)や電力量計、温度センサーなどの機器を共通の通信規格で接続し、データを一元的に収集することが可能です。
その結果、設備監視や予防保全、エネルギー管理へ活用しやすくなります。
本記事では、Modbusの仕組みやRTU・TCP/IP・ASCIIの違いを解説します。
また、Modbusを活用したデータ収集の流れや活用事例も紹介しますので、参考にしてください。
この記事からわかること
- Modbusの基本的な仕組みと、RTU・TCP/IP・ASCIIの違い
- Modbusを利用するメリットや注意点、設備監視・予防保全への活用事例
- WGWBとWMS-PE2を活用したModbusデータの収集・管理方法
目次
Modbusとは?
Modbus(モドバス)とは、PLC(シーケンサ)や電力量計、温度計、流量計などの産業機器同士でデータをやり取りするための通信プロトコルです。
1979年に開発され、現在でも世界中の工場やビル設備で広く利用されています。
工場では、設備の稼働状況や電力使用量、温度などのデータを収集し、一元管理する場面が増えています。
しかし、機器ごとに通信方式が異なると、データをまとめて管理することは容易ではありません。
Modbusは、多くのメーカーが採用している標準的な通信プロトコルであるため、異なるメーカーの機器同士でもデータをやり取りしやすいことが特徴です。
そのため、設備監視やエネルギー管理システム、IoT化など幅広い用途で活用されています。
Modbusの仕組み
Modbusを活用するためには、どのように機器同士が通信しているのかを理解しておくことが重要です。
Modbus通信の基本的な仕組みについて解説します。
クライアント(マスター)とサーバー(スレーブ)が通信する仕組み
Modbusでは、1台のクライアント(マスター)が複数のサーバー(スレーブ)へ通信を指示し、その要求に応じてスレーブがデータを返す仕組みです。
例えば、PLCをマスター、電力量計や温度計をスレーブとして構成すると、PLCが「現在の電力使用量を送ってください」と要求を送り、電力量計が計測データを返します。
マスターは必要な機器へ順番に問い合わせを行うため、通信の衝突を抑えながらデータを収集できます。
このような通信方式により、設備の稼働状況や電力使用量、温度などのデータを一元的に収集し、監視システムやエネルギー管理システムで活用可能です。
レジスタを読み書きしてデータをやり取りする仕組み
Modbusでは、機器ごとに用意された「レジスタ」と呼ばれるデータ領域を読み書きすることで情報をやり取りします。
レジスタには、電力使用量や温度、圧力、機器の運転状態など、さまざまなデータが格納されています。
マスターは、読み取りたいレジスタのアドレスを指定してスレーブへ要求を送り、要求を受けたスレーブは、指定されたレジスタの値を返信する仕組みです。
また、機器によってはレジスタへ値を書き込むことで、運転・停止や設定値の変更などの制御も行えます。
レジスタを介してデータをやり取りすることで、異なるメーカーの機器でも共通のルールで通信することが可能です。
そのため、設備監視やエネルギー管理など、多くの産業分野でModbusが採用されています。
Modbusの種類はRTU・TCP/IP・ASCIIの3つ
Modbusには複数の通信方式がありますが、代表的な種類は「Modbus RTU」「Modbus TCP/IP」「Modbus ASCII」の3つです。
それぞれ通信方法や利用するネットワークが異なるため、用途や導入環境に応じて使い分けられています。
Modbus RTU
Modbus RTUは、RS-485やRS-232などのシリアル通信を利用する通信方式です。
工場の生産設備や計測機器、PLC(シーケンサ)などで広く採用されており、現在も最も普及しているModbusの通信方式の一つです。
データを2進数(バイナリ形式)で送受信するため、通信効率が高く、通信量を抑えられることが特徴です。
また、比較的長い距離でも安定して通信しやすく、ノイズの多い工場環境でも利用されています。
Modbus TCP/IP
Modbus TCP/IPは、Ethernet(LAN)を利用して通信を行う方式です。
一般的なTCP/IPネットワーク上で通信できるため、既存のLAN環境を活用しやすく、工場やビルのネットワークへ組み込みやすいことが特徴です。
Modbus RTUがシリアル通信を利用するのに対し、Modbus TCP/IPはネットワーク経由でデータを送受信します。
そのため、複数の機器と高速に通信しやすく、遠隔地にある設備の監視や上位システムとの連携にも適しています。
Modbus ASCII
Modbus ASCIIは、データをASCII文字へ変換して送受信する通信方式です。
人が内容を確認しやすいことが特徴であり、通信内容をテキストとして読み取りやすいというメリットがあります。
一方で、データを文字列に変換して送信するため、Modbus RTUと比べると通信効率は高くありません。
そのため、現在の工場や設備監視システムでは、通信速度や効率に優れるModbus RTUやModbus TCP/IPが採用されるケースが一般的です。
Modbusを利用するメリット

Modbusは設備の稼働状況やエネルギーデータを収集し、監視や分析へ活用できるため、工場のDXや省エネルギーの推進にも役立ちます。
Modbusを利用する主なメリットを紹介します。
導入コストを抑えやすい
Modbusはオープンな通信プロトコルであり、多くのメーカーが対応機器を提供しています。
そのため、特定のメーカーの製品だけに依存する必要がなく、用途や予算に応じて機器を選定しやすいことが特徴です。
また、Modbus対応の電力量計やセンサー、PLC(シーケンサ)は数多く流通しているため、比較的導入コストを抑えながらシステムを構築できます。
既存設備がModbusに対応している場合は、新たな機器への大規模な入れ替えを行わずにデータ収集環境を構築できるケースもあります。
異なるメーカーの機器を接続しやすい
Modbusは、多くのメーカーが採用している標準的な通信プロトコルです。
そのため、メーカーが異なるPLC(シーケンサ)や電力量計、センサーなども接続しやすく、設備全体のデータを一元的に管理しやすくなります。
例えば、既存設備を活用しながら新しい計測機器を追加したい場合でも、双方がModbusに対応していれば連携できる可能性があります。
設備ごとに通信方式を統一する必要がないため、システム構築の自由度が高まることもメリットです。
データ収集や監視を効率化できる
Modbusを利用すると、PLC(シーケンサ)や電力量計、センサーなどからデータを自動で収集できます。
担当者が設備ごとに計測値を確認したり、手作業で記録したりする必要がなくなるため、日常業務の負担軽減につながります。
また、収集したデータを監視システムやクラウドへ集約することで、設備の稼働状況や電力使用量、温度などを一元的に把握することが可能です。
異常が発生した場合も変化を早期に検知しやすくなり、設備トラブルへの迅速な対応にも役立ちます。
IoTやスマート工場との親和性が高い
Modbusは、IoTやスマート工場を構築する際にも広く利用されている通信プロトコルです。
設備から収集したデータをPLC(シーケンサ)やゲートウェイを経由してクラウドや上位システムへ送信できるため、工場全体のデータを一元管理しやすくなります。
また、SCADA(設備の監視・制御を行うシステム)やMES(製造現場の生産工程を管理するシステム)、エネルギー管理システムなど、さまざまなシステムと連携しやすいことも特徴です。
設備の稼働状況や電力使用量などをリアルタイムで把握できるため、生産性の向上や省エネルギー施策の推進に役立ちます。
Modbusを利用する際の注意点
Modbusは多くの設備で採用されている便利な通信プロトコルですが、安定した通信を実現するためには、いくつか注意すべき点があります。
Modbusを利用する際に確認しておきたい注意点を紹介します。
レジスタ設定やアドレス管理に注意する
Modbusでは、レジスタのアドレスを指定してデータを読み書きします。
そのため、接続する機器ごとのレジスタマップを確認し、取得したいデータのアドレスを正しく設定することが重要です。
機器によっては、同じ計測項目でもレジスタの割り当てやデータ形式が異なる場合があります。
設定を誤ると、期待したデータを取得できなかったり、誤った値を読み取ったりする原因になります。
また、多数の機器を接続する場合は、機器ごとのアドレス管理も欠かせません。
同じアドレスを設定すると正常に通信できなくなるため、接続する機器ごとに重複しないアドレスを設定しましょう。
通信設定を適切に行う
Modbusで安定した通信を行うためには、接続する機器の通信設定を統一する必要があります。
設定が一致していない場合、正常にデータを送受信できません。
例えば、Modbus RTUでは通信速度(ボーレート)やデータ長、パリティビット、ストップビットなどの設定を機器間で合わせる必要があります。
また、Modbus TCP/IPではIPアドレスやポート番号などを適切に設定しなければ通信できません。
通信エラーが発生した場合は、機器の故障だけでなく、通信設定の不一致が原因となっているケースも少なくありません。
導入時や機器を追加する際は、各機器の設定内容を事前に確認しておくことが重要です。
セキュリティ対策を実施する
Modbusはシンプルな通信プロトコルである一方、認証や暗号化などのセキュリティ機能は標準で備わっていません。
そのため、ネットワーク環境によっては、不正アクセスやデータ改ざんなどのリスクに注意する必要があります。
特に、Modbus TCP/IPを利用して社内ネットワークやインターネットへ接続する場合は、適切なセキュリティ対策が欠かせません。
ファイアウォールで通信を制限したり、VPNを利用して安全な通信経路を確保したりすることが重要です。
Modbusの活用事例
Modbusが実際にどのような場面で活用されているのか、事例を紹介します。
モータの稼働監視と予防保全
モータの電流値や温度をModbusで収集し、遠隔から稼働状況を監視した事例です。
設備の状態をリアルタイムで把握することで、故障する前の予防保全を実現しています。
| 導入前(Before) | 導入後(After) |
| モータの異常や劣化を早期に発見できない | 電流値・温度をリアルタイムで監視できる |
| メンテナンスのタイミングを判断しにくい | モータの負荷状態や劣化状況を把握し、計画的な予防保全につなげられた |
| 異常が発生するまで設備の状態を把握できない | 閾値を超えた際に担当者へ警報メールを通知できる |
| 現地で設備を確認する必要がある | 遠隔から設備の稼働状況を確認できる |
モータの電流値は、設備にどの程度の負荷がかかっているかを判断するための指標として活用できます。
また、Pt100Ωセンサーによる温度監視を組み合わせることで、過負荷による異常な温度上昇も検知できます。
収集したデータはIoTゲートウェイを介して遠隔から確認でき、異常時には担当者へメール通知も可能です。
マンホールポンプの遠隔監視
広範囲に点在するマンホールポンプの稼働状況を遠隔から監視し、異常発生時に担当者へメール通知できるようにした事例です。
現地へ巡回しなくても設備の状態を把握できるため、保守業務の効率化と迅速な対応を実現しています。
| 導入前(Before) | 導入後(After) |
| 広範囲に点在する設備を定期的に巡回する負担が大きい | リアルタイムで稼働状況を監視できる |
| 異常が発生しても現地へ行くまで状況を把握できない | 異常発生時に担当者へメール通知できる |
| 現場へ行かなければ設備を確認できない | パソコンやスマートフォンから設備の状態を確認できる |
| 遠隔監視システムの導入コストが課題 | 比較的低コストで遠隔監視を実現できる |
IoTゲートウェイを活用してマンホールポンプの運転状況や水位、ポンプ電流などのデータを収集し、LTE回線を通じて遠隔地へ送信します。
担当者はパソコンやスマートフォンから設備の状態を確認でき、異常が発生した際にはメール通知を受けられます。
現地への巡回回数を減らしながら設備の状態を継続的に監視できるため、故障の早期発見や迅速なメンテナンスにつながるでしょう。
Modbusで収集したデータの活用方法

Modbusで収集したデータの活用方法を紹介します。
設備の稼働監視に活用する
Modbusで設備の稼働データを収集すると、生産設備やユーティリティ設備の運転状況をリアルタイムで監視できます。
設備ごとの稼働状況を一元管理できるため、現場へ行かなくても運転状況を把握しやすくなります。
また、設備の稼働時間や停止時間、運転回数などを継続的に記録することで、設備の利用状況を分析することが可能です。
稼働率の低い設備や停止が頻発している設備を把握できるため、生産計画や設備運用の改善にも役立ちます。
収集したデータを監視システムやクラウドで可視化すれば、複数拠点や複数設備の状況もまとめて確認できます。
異常検知や予防保全に活用する
Modbusで収集したデータは、設備の異常を早期に検知し、予防保全へ活用可能です。
電流値や温度、圧力、振動などのデータを継続的に監視することで、設備の異常な変化を把握しやすくなります。
例えば、通常時より電流値が高くなっている場合は、設備へ過大な負荷がかかっている可能性があります。
また、温度の上昇や振動の増加なども、故障の前兆であるケースが少なくありません。
あらかじめ閾値を設定しておけば、異常を検知した際に担当者へ通知することも可能です。
エネルギー管理に活用する
Modbusで電力量計やガスメーター、流量計などからデータを収集すると、設備ごとのエネルギー使用量を把握できます。
使用量をリアルタイムで監視できるため、エネルギーの無駄が発生している設備や時間帯を見つけやすくなります。
また、収集したデータを蓄積・分析することで、設備ごとの消費電力やエネルギー使用量の推移を比較可能です。
改善施策の実施前後で効果を検証できるため、省エネルギー活動を継続的に進める際にも役立ちます。
Modbusデータを活用したエネルギー管理ならWGWBがおすすめ
Modbus対応機器から収集したデータは、監視するだけでなく、エネルギー管理にも活用できます。
しかし、機器ごとにデータを管理していると、設備全体の状況を把握しにくく、分析にも手間がかかります。
そこで役立つのが、渡辺電機工業株式会社のIoTゲートウェイ「WGWB」と薄型電力量計「WMS-PE2」です。
WGWBでModbus RTUデータを収集・管理する
WGWBは、Modbus RTUに対応したIoTゲートウェイです。
電力量計や流量計、温度計、PLC(シーケンサ)など、Modbus RTU対応機器からデータを収集し、見分録クラウドや上位システムへ送信できます。
収集したデータは、設備ごとの電力使用量や稼働状況、温度などをリアルタイムで把握するために活用できます。
また、異なるメーカーのModbus対応機器も接続しやすいため、既存設備を活用しながらデータ収集環境を構築しやすいことも特徴です。
WMS-PE2で電力データを計測する
WMS-PE2は、DI(デジタル入力)とDO(デジタル出力)を搭載した薄型電力量計です。
設備の電力使用量を計測するとともに、DIでパルス信号を受けることもできます。
計測したデータはWGWBへ送信され、さらに見分録クラウドへ連携することで、電力使用量や設備の稼働状況を可視化できます。
収集したデータをグラフや帳票で確認できるため、エネルギー使用量の推移や設備ごとの違いを分析することが可能です。
改善施策の実施前後を比較しながら効果を検証できるため、継続的な省エネルギー活動にも役立つでしょう。
WGWBのデータを上位システムやクラウドへ連携する
WGWBは、Modbus RTUで収集したデータをWeb APIやFTPなどを用いて、上位システムやクラウドへスムーズに送信・連携できます。
そのため、通信方式が異なる機器同士でもデータを連携しやすく、既存システムを活用しながら監視環境を構築できます。
また、新たにModbus TCP対応機器へ更新することなく、既存のModbus RTU対応機器から取得したデータを有効活用できることも特徴です。
Modbusに関するよくある質問
Modbusに関するよくある質問を紹介します。
Modbus TCPとModbus RTUの違いは?
Modbus TCPはEthernet(LAN)を利用して通信する方式で、ネットワーク経由で複数の機器と高速に通信できます。
一方、Modbus RTUはRS-485やRS-232などのシリアル通信を利用する方式です。
Modbus通信ではどのようなケーブルを使用する?
使用するケーブルは通信方式によって異なります。
Modbus RTUではRS-485ケーブルやRS-232ケーブル、Modbus TCPではEthernetケーブル(LANケーブル)を使用します。
導入時は、接続する機器が対応している通信方式を確認し、それに適したケーブルを選定することが重要です。
Modbusとはわかりやすくいうと何?
Modbusとは、PLC(シーケンサ)や電力量計、センサーなどの産業機器同士がデータをやり取りするための共通ルール(通信プロトコル)です。
異なるメーカーの機器でも通信しやすいことから、設備監視やエネルギー管理、工場のIoT化など幅広い用途で利用されています。
まとめ
Modbusは、PLC(シーケンサ)や電力量計、センサーなどの産業機器同士でデータをやり取りするための通信プロトコルです。
異なるメーカーの機器とも接続しやすく、設備監視や遠隔監視、エネルギー管理など幅広い用途で活用されています。
また、収集したデータを継続的に蓄積・分析することで、設備の異常検知や予防保全、省エネルギー活動にも役立ちます。
IoTやスマート工場の実現に向けて、Modbusを活用したデータ収集・管理の重要性は今後さらに高まるでしょう。
渡辺電機工業株式会社のWGWBは、Modbus RTU対応機器からデータを収集し、PLCやSCADAとの連携や薄型電力量計「WMS-PE2」への活用を支援します。
設備データの見える化やエネルギー管理を効率化したい場合は、ぜひ渡辺電機工業株式会社へご相談ください。




