
工場や事業所の電気代は、使用量(kWh)だけでなく、最大需要電力(デマンド値)によっても大きく左右されます。
そのため、電力使用のピークを抑える「ピークカット」や、使用時間帯をずらす「ピークシフト」は、電気代削減に直結する重要な取り組みです。
一方で、「ピークカットとピークシフトの違いがよく分からない」「自社では何から取り組めばよいのか判断できない」と感じている担当者の方も少なくありません。
本記事では、ピークカット・ピークシフトの基本的な意味や仕組みを整理した上で、電気代削減につながる理由、工場で実践しやすい導入方法を分かりやすく解説します。
目次
ピークカットとは?基本的な意味
ピークカットやピークシフトは、電気代の中でも基本料金に大きく影響する「最大需要電力(デマンド値)」を抑えるための考え方です。
それぞれの言葉が指す内容や仕組みについて、どのような違いがあるのかを分かりやすく解説します。
ピークカットとは?
ピークカットとは、電力使用量が最も大きくなる瞬間の負荷を意図的に抑える取り組みのことです。
工場や事業所では、特定の時間帯に電力使用が集中し、最大需要電力(デマンド値)が一気に跳ね上がることがあります。
電力契約では、このデマンド値が基本料金や契約電力の基準になります。
そのため、短時間であっても高いピークが発生すると、その月だけでなく、一定期間の電気代に影響を及ぼしてしまうのです。
ピークカットでは、こうした状況を避けるために、設備の同時稼働を控えたり、負荷の大きい機器の運転を調整したりします。
電力使用の「山」を低くするイメージを持つと分かりやすいでしょう。
ピークシフトとは?
ピークシフトとは、電力使用が集中する時間帯を避け、使用時間を別の時間帯へ移す取り組みのことです。
工場では、生産設備や空調、コンプレッサなどが同じ時間帯に稼働すると、電力使用が一気に集中しやすくなります。
そこで、稼働時間を前後に調整し、電力使用の重なりを減らすことで、デマンド値の上昇を抑えます。
例えば、立ち上げ時に負荷の大きい設備の起動時間をずらしたり、夜間や休日に一部工程を移したりする方法がピークシフトです。
電気を使う量自体は大きく変わらなくても、使い方を工夫することで効果を得られます。
ピークカットとピークシフトの違い
ピークカットが「ピークの高さを下げる対策」であるのに対し、ピークシフトは「ピークが発生する時間帯をずらす対策」であることが大きな違いです。
ピークカットは、設備の同時稼働を避けたり、一部設備の出力を制限したりすることで、ピークの高さを低くします。
一方、ピークシフトは、電力を多く使う時間帯を別の時間帯へ移すだけで、使用量を変えるわけではありません。
実際の現場では、ピークカットとピークシフトを組み合わせて運用するケースが一般的です。
ピークカットで電気代が節約できる理由

ピークカットは電力使用量を大きく変えなくても、電気代の中でも負担が大きい基本料金を抑えやすい取り組みです。
ピークカットがなぜ電気代削減に直結するのかを、具体的に解説します。
デマンド値が基本料金・契約電力に影響するため
電気代を考える上で重要なのが、最大需要電力(デマンド値)が基本料金や契約電力の基準になるということです。
工場や事業所向けの電力契約では、一定期間に記録された最大の電力使用量をもとに、料金が算定されます。
つまり、一瞬だけでも高いデマンド値が出ると、その月の電気代は高くなるということです。
ピークカットに取り組むことで、このような突発的なピークを抑えやすくなります。
結果として、契約電力の見直しや基本料金の抑制につながり、継続的なコスト削減が期待できます。
電力量料金だけでなく固定費削減につながるため
電気代というと、使用量に応じて増減する電力量料金に目が向きがちです。
しかし、工場や事業所では、毎月ほぼ一定で発生する基本料金の割合が大きいケースも少なくありません。
ピークカットは、電力量料金を直接下げる取り組みではありません。
それでも、最大需要電力を抑えることで、基本料金や契約電力の引き下げにつながります。
どのようなときにピークカットが必要になるのか
ピークカットが必要かどうかを判断するためには、どのような場面で電力が集中しているのかを知ることが重要です。
工場で特にピークが発生しやすいケースを紹介します。
大型設備を同時に稼働させるとき
工場でピークが発生しやすい代表的な場面が、大型設備を同じタイミングで稼働させる場合です。
生産設備やコンプレッサ、空調設備などは、起動時に大きな電力を消費します。
これらの設備が重なると、短時間でデマンド値が急上昇します。
通常運転中の使用量が安定していても、立ち上げ時の負荷が原因でピークが記録されることは少なくありません。
特に、始業時や休憩後の再稼働タイミングは注意が必要です。
現場の判断で一斉にスイッチを入れてしまうと、意図せず高いピークを作り出します。
夏季・冬季など空調負荷が大きくなる時期
1年の中でも、夏季や冬季など空調の使用が増える時期は、ピークカットの重要性が高まります。
夏場は冷房、冬場は暖房が長時間稼働し、空調設備が電力使用の大きな割合を占めるためです。
このような時期は、生産設備の稼働と空調負荷が同じ時間帯に重なりやすくなります。
その結果、電力使用が一時的に集中し、デマンド値が想定以上に上昇するケースも見られます。
生産量が増え、設備稼働が増加したとき
生産量の増加に伴い、設備の稼働時間や稼働台数が増えると、ピークが発生しやすくなります。
売上拡大や受注増加は望ましい一方で、電力の使われ方が変化することには注意しましょう。
設備を追加したり、稼働時間を延ばしたりすると、これまで問題にならなかった時間帯で電力が集中することがあります。
このような場合、従来の電力契約や運用ルールが現状に合わなくなっている可能性があり、注意が必要です。
ピークカットを意識せずに稼働を続けると、電気代の増加に気付きにくくなります。
工場で実践しやすいピークカットの導入方法

ピークカットは特別な設備投資を行わなくても、現場の把握と運用改善から段階的に進められます。
重要なのは、いきなり対策を打つのではなく、電力の使われ方を正しく理解することです。
工場で実践しやすいピークカットの導入方法を紹介します。
デマンド値・電力使用状況を把握する
ピークカットに取り組む際、最初に行うべきなのがデマンド値と電力使用状況の把握です。
現状を知らないまま対策を進めても、効果的な改善にはつながりません。
電力使用量の合計だけを見ていると、ピークが発生している時間帯や要因を見落としがちです。
特に、短時間に電力が集中している場面は、請求書だけでは判断しにくい傾向があります。
デマンド値の推移や時間帯別の使用状況を確認すると、電力の使われ方に偏りがあることが分かります。
始業時や休憩後、特定の工程で数値が跳ね上がっていないかをチェックしましょう。
ピークが発生する時間帯・設備を特定する
デマンド値や電力使用状況を把握できたら、次はピークが発生している時間帯と設備を具体的に特定します。
時間帯別の電力データを確認すると、電力使用が集中するタイミングが見えてきます。
始業直後、昼休憩後、夕方などは設備の稼働が重なりやすいため、特に要注意な時間帯です。
設備単位で電力使用を把握できると、影響の大きい設備から優先的に見直すことができます。
空調・コンプレッサの制限によるピークカット
空調設備やコンプレッサは、工場全体で使用されることが多く、負荷が重なりやすいことが特徴です。
空調では、設定温度や運転方法を見直すことで、ピークを抑えやすくなります。
始業時に一斉稼働させるのではなく、段階的に運転を開始する方法も有効です。
コンプレッサについては、不要な稼働が発生していないかを確認しましょう。
待機中のエア漏れや過剰な圧力設定が、ピークの原因になる場合があります。
ピークカットを意識するあまりに、快適性や生産性を損なうことがないように注意しましょう。
設備の同時起動を避ける運用ルールをつくる
ピークカットを進める上で効果的なのが、設備の同時起動を避ける運用ルールの整備です。
特に、立ち上げ時に負荷の大きい設備が重なると、短時間でデマンド値が上昇します。
始業時や休憩後は、現場の判断で一斉に設備を起動しがちです。
そのため、あらかじめ起動順序や時間間隔を決めておくと、負荷の集中を防ぎやすくなります。
運用ルールは、現場で守られなければ意味がありません。
誰が見ても分かる形で共有し、日常業務に組み込むことが重要です。
デマンド監視によるリアルタイム管理を導入する
ピークカットを安定して行うには、デマンド値をリアルタイムで把握できる仕組みが欠かせません。
デマンド監視では、現在の電力使用状況や予測デマンドを常時確認します。
設定した上限に近づいた際にアラートを出すことで、早めの対応が可能です。
例えば、負荷の大きい設備の稼働を一時的に調整したり、起動タイミングを見送ったりする判断につながります。
現場の感覚に頼らず、数値をもとに判断できることが大きなメリットです。
蓄電池・蓄熱システムの活用を検討する
より確実にピークを抑えたい場合は、蓄電池や蓄熱システムの活用も選択肢の一つです。
蓄電池・蓄熱システムは、電力使用が少ない時間帯にエネルギーを蓄え、ピーク時に放電・放熱します。
そのため、電力使用量を抑えられ、デマンド値の上昇防止に役立ちます。
一方で、導入にはコストや設置スペースの検討が必要です。
運用改善だけでは対応しきれない場合には、段階的に検討するとよいでしょう。
ピークカットで得られるメリット
ピークカットは電気代削減にとどまらず、工場全体のエネルギー管理を底上げする取り組みです。
短期的なコスト対策としてだけでなく、継続的な改善につながることが大きなメリットです。
ピークカットで得られるメリットを紹介します。
基本料金の削減につながる
ピークカットの最大のメリットは、電気代の中でも負担が大きい基本料金の削減につながることです。
電力量料金は使用量に応じて変動します。
一方、基本料金は毎月固定で発生するため、これを抑えられれば、大きな削減効果が期待できます。
一時的な節電だけでは、基本料金は下がりにくい傾向がありますが、ピークカットによりデマンド値を安定させることで、継続的なコスト削減が可能になります。
従業員の省エネ意識向上につながる
ピークカットに取り組むことで、従業員一人ひとりが電力の使い方を意識するきっかけになります。
日常業務の中で、省エネを強く意識せずに働いている人は少なくありません。
しかし、電気代の仕組みやデマンドの考え方を共有すると、自分たちの行動が電力コストに影響していることが理解しやすくなります。
その結果、自然と省エネへの意識が高まっていきます。
個々が省エネ行動を心がけることも大切ですが、従業員全体で意識の水準をそろえることも重要です。
工場全体で省エネに取り組んでいるという共通認識が定着すれば、協力体制を築きやすくなります。
エネルギー管理レベルの向上につながる
ピークカットに継続して取り組むことで、工場全体のエネルギー管理レベルが高まります。
電力使用を感覚ではなく、数値をもとに判断する姿勢が定着していくためです。
デマンド値や使用状況を定期的に確認するようになると、電力の使われ方を客観的に捉えられます。
その結果、場当たり的な対応ではなく、計画的な改善が行いやすくなります。
また、属人化を防ぎ、安定したエネルギー管理につながることも大きなメリットです。
このような取り組みの積み重ねが、省エネ施策やコスト管理の精度を高めていくでしょう。
ピークカットには電力の可視化が欠かせない

ピークカットを安定して続けるためには、電力使用状況を可視化する仕組みが不可欠です。
数値として把握できなければ、「どこで」「なぜ」ピークが発生しているのかを正確に判断できません。
電力の可視化によって得られる具体的な効果を解説します。
ピーク発生の予兆に気付けるようになる
事後的にデータを確認するだけでは、ピークを未然に防ぐことは困難です。
しかし、デマンド値の推移をリアルタイムで確認できれば、数値が上昇し始めた段階で対策を考えられます。
電力を可視化すると、どの時間帯に負荷が集中しやすいのかが明確になります。
その情報をもとに、設備の稼働調整や運用ルールの見直しを行うとよいでしょう。
ピークの兆候を把握できるようになると、現場の判断にも余裕が生まれ、慌てて対応することも減ります。
省エネ対策にもなる
電力の可視化は、ピークカットだけでなく日常的な省エネ対策にもつながります。
使用状況が数値で把握できると、無駄な電力使用に気付きやすくなるためです。
例えば、稼働していない設備が電力を消費していたり、必要以上に負荷がかかっていたりすることに気付けば、運用の見直しや改善につなげやすくなります。
省エネの効果は、目に見えにくく継続しにくいものです。
可視化によって変化を確認できるようになると、取り組みの手応えを感じやすくなります。
電力管理を一過性の施策に終わらせないためにも、可視化は重要な役割を果たします。
対策の優先順位をデータで判断できる
電力の可視化を進めることで、どの対策から取り組むべきかをデータに基づいて判断することが可能です。
電力使用量やデマンド値を設備別・時間帯別に確認すると、影響の大きい要因が明確になります。
その結果、優先的に見直すべき設備や工程が浮かび上がります。
全てを一度に改善しようとすると、現場の負担が大きくなりがちです。
データをもとに優先順位をつけることで、無理のない形でピークカットを進めやすくなります。
また、効果が出やすい対策から着手すると成果を実感しやすく、継続的な改善とエネルギー管理の定着につながるでしょう。
まとめ
ピークカット・ピークシフトは、電力使用量そのものを減らす対策ではありません。
電力の使い方を見直し、最大需要電力(デマンド値)を抑えることで、電気代の構造に働きかける取り組みです。
ピークカットを進めるためには、まず電力使用状況を把握し、ピークの原因を明確にすることが重要です。
運用ルールの見直しやデマンド監視、電力の可視化を組み合わせることで、無理のない対策につながります。
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