
エネルギーコストの高騰や脱炭素経営の推進により、工場や事業所では「電力の見える化」への関心が高まっています。電力使用量を把握できれば、無駄な消費を減らし、設備の稼働実態を正確に理解することが可能です。
しかし、電力の見える化といっても、方法や手順はさまざまです。計測機器の選定やデータ収集の仕組みづくりには専門性が求められます。本記事では、電力の見える化のメリットや導入までの流れ、依頼先を選ぶ際のポイントまでを分かりやすく紹介します。
目次
電力の見える化とは?重要性と背景
電力の見える化とは、工場や事業所で使用している電力を数値やグラフとして把握し、使用状況を客観的に確認する取り組みです。
電気は目に見えないため、感覚だけで管理すると無駄や異常に気づきにくいものです。電力使用量を可視化することで、どの設備が、いつ、どれだけ電力を消費しているのかが明確になります。
電力の見える化が重要な理由
電力の見える化が重要とされる最大の理由は、電力使用の実態を正確に把握できることです。電気代の請求書だけでは、どの設備や工程が電力を多く消費しているのか判断しにくいです。
見える化によって時間帯別や設備別の使用量が明確になり、無駄な待機電力や非効率な運転に気づきやすくなります。また、電力使用量を定量的に管理することで、改善施策の効果を数値で検証しやすくなります。
勘や経験に頼らないエネルギー管理が可能になり、継続的なコスト削減や安定した設備運用が可能です。
電力の見える化が注目される背景
電力の見える化が注目されている背景には、エネルギーコストの上昇と脱炭素経営への要請などがあります。
燃料価格の変動や電気料金の値上げにより、従来どおりの電力管理ではコスト増加に対応できなくなっています。そのため、使用量を正確に把握し、無駄を削減する取り組みが多くの企業で求められているのです。
また、カーボンニュートラルやESG経営への関心が高まり、電力使用量の把握や削減状況を説明する責任も強まっています。省エネ法をはじめとする各種制度への対応においても、客観的なデータ管理は重要です。こうした状況から、感覚的な管理ではなく、データに基づいた電力の見える化が経営課題の一つとして重要視されています。
電力の見える化の3つの方法

電力の見える化には、目的や管理レベルに応じたいくつかの方法があります。簡易的に現状を把握したい場合と、継続的に改善を進めたい場合とでは、適した手法が異なります。それぞれ特徴や適した利用シーンが異なるため、自社の課題や規模に合わせて選ぶことが重要です。
手作業による見える化(グラフ化など)
手作業による見える化とは、電気料金の検針データやメーターの数値をもとに、表やグラフを作成して電力使用量を把握する方法です。
Excelなどがあれば簡単に始められるので、初期費用を抑えられるのが特徴です。月別や日別の使用量を整理することで、電力使用の増減傾向を大まかに把握できます。詳しいデータが必要ではなく、見える化を体験したい場合におすすめです。
一方で、設備ごとの詳細な使用状況や時間帯別の変化までは把握しにくいです。データ収集や入力を人手で行う必要があるため、担当者の負担が大きくなってしまいます。また、人による作業であるため、人的ミスが発生しやすいことがデメリットです。
| メリット | ・初期費用がほとんどかからない ・小規模な会社でも始めやすい |
| デメリット | ・設備別・時間帯別の把握が難しい ・作業負担が大きく継続しにくい ・改善効果を定量的に検証しにくい ・人的ミスが発生しやすい |
計測装置による見える化(デマンド監視装置など)
計測装置による見える化とは、分電盤や設備ごとに電力計測器やデマンド監視装置を設置し、電力使用量を自動で取得する方法です。
人手による記録が不要になり、電力データを継続的に蓄積できることが特徴です。最大需要電力(デマンド)を監視すれば、契約電力の超過を防ぎ、電気料金の抑制にもつながります。
また、時間帯別の使用状況が把握しやすくなり、ピークが発生する原因となる設備や工程を特定しやすくなります。そのため、運転時間の見直しや設備の使い分けといった具体的な省エネ対策が可能です。
一方で、取得できるデータは装置の設置範囲に依存するため、全体最適の分析には工夫が必要です。設置工事や機器選定には一定の専門知識も求められます。
| メリット | ・電力使用量を自動で継続的に取得できる ・デマンド超過を防ぎやすくなる ・時間帯別の電力使用状況を把握できる |
| デメリット | ・初期費用がかかる ・設置範囲外の設備は把握できない |
データの収集・管理、活用までワンストップで行いたい方は、渡辺電機工業にお任せください。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)による見える化
エネルギーマネジメントシステムによる見える化とは、電力を中心に、工場や事業所で使用するエネルギーを一元的に管理し、分析や改善につなげる仕組みです。
電力だけでなく、水道やガスなど、各種エネルギーの使用量をまとめて把握できます。そのため、エネルギー全体の無駄や偏りを把握しやすいことが特徴です。
近年は、IoT技術を活用してセンサーや計測機器からデータを自動収集するケースが一般的です。配線工事を最小限に抑えた計測や、遠隔でのデータ確認も行いやすくなっています。リアルタイムで状況を確認できるため、異常の早期発見や迅速な対応にもつながります。
また、過去データとの比較や傾向分析を通じて、改善余地のあるポイントを把握できることも特徴の一つです。一方で、導入時には目的や活用方法を整理しておくことが重要です。目的があいまいなまま導入すると、十分に活用されず形骸化するおそれがあります。
| メリット | ・電力・水道・ガスなどを一元管理できる ・設備別や工程別の消費量を詳細に分析できる ・リアルタイムで電力使用状況を把握できる |
| デメリット | ・初期費用がかかる ・設計や運用に専門知識が求められる |
電力の見える化を導入するまでの流れ
電力の見える化は、計測機器を設置すればすぐに完了する取り組みではありません。
効果を得るためには、計測、データ収集、分析、改善という段階を踏むことが重要です。
センサーを設置して電力を測定する
電力の見える化における最初のステップは、電力を正確に測定するためのセンサーや計測機器を設置することです。
分電盤や設備ごとに電流センサーや電力計を取りつけることで、どの設備がどれだけ電力を使用しているのかを把握しやすくなります。全体の使用量だけでなく、工程別やライン別に測定することで、無駄や偏りが生じている箇所を特定できます。
また、計測範囲を事前に整理することも重要です。いきなり全設備を対象にすると、コストや管理負担が大きくなります。まずは消費電力の大きい設備や稼働時間の長い設備から測定を始めてみましょう。
IoT機器でデータを集める
センサーで電力を測定した後は、IoT機器を活用してデータを自動的に収集します。IoTとは「Internet of Things」の略称で、センサーや機器をインターネットに接続し、データを自動的に収集・活用する仕組みのことです。
IoTを用いることで、計測した電力データをリアルタイムで集約し、担当者が現場に行かなくても状況を把握できます。そのため、稼働中の設備が多い工場や複数拠点を持つ事業所でも導入しやすいです。
電力の見える化とデータ分析を行う
IoT機器で収集した電力データは、分析することで価値が生まれます。例えば、稼働していない時間帯に電力使用量が高い場合は、待機電力が発生している可能性があります。
また、特定の設備だけが常に高い電力を消費している場合は、運転方法や設備の劣化が影響していることも考えられるでしょう。このように、データをもとに分析することで、改善すべきポイントが明確になります。
さらに、過去データと比較することで、対策前後の変化を確認しやすくなり、次の省エネ施策につながります。
改善施策の実行と効果検証
データ分析によって課題が明確になったら、具体的な改善施策を実行します。代表的な施策としては、設備の稼働時間の見直しや、ピーク時間帯を避けた運転への切り替え、老朽化した設備の更新などが挙げられます。
重要なのは、分析結果に基づいて優先順位をつけ、無理のない範囲から着手することです。電力の見える化を行っていれば、対策前後の電力使用量を比較しやすくなります。効果が十分でない場合は、施策内容や運用方法を見直し、実行と検証を繰り返すことが大切です。
電力の見える化のメリット

電力の見える化を導入することで、電力使用の状況を把握できるだけでなく、経営や現場運営にもさまざまな効果が期待できます。単なる数値の確認にとどまらず、省エネ施策の精度向上や組織全体の意識改革につながることが大きな特徴です。
無駄な電力使用を減らして省エネにつながる
電力の見える化によって、稼働していない時間帯にも電力を消費している設備や、必要以上に長時間稼働している機器などが明確になります。こうした状況を把握することで、運転時間の調整や停止ルールの見直しといった具体的な省エネ対策を検討することが可能です。
また、デマンドの発生状況を確認すれば、ピーク電力を抑える工夫もしやすくなります。結果として、電気料金の削減だけでなく、エネルギーの使い方そのものを見直すきっかけにもなります。
企業の環境配慮をアピールできる
電力の見える化は、環境への取り組みを社内外に示す手段としても有効です。電力使用量を把握し、削減に向けた取り組みを進めていることは、脱炭素経営や環境配慮を重視する姿勢の表れになります。
近年は、取引先や金融機関から環境対応を求められる場面も増えています。電力の見える化によって得られたデータは、環境報告や社内資料にも活用しやすいです。取り組み内容を明確に示せることで、企業の信頼性の向上にもつながります。
従業員の意識が変わるきっかけになる
電力の見える化は、経営層だけでなく、現場で働く従業員の意識改革にもつながります。
電力使用量が数値やグラフとして従業員の目に触れる場所に表示されていれば、自然と関心を持つ人が増えるものです。
設備の停止忘れや不要な稼働が数値として表れることで、日常業務の中で電力を意識する機会も多くなります。その結果、現場レベルで省エネへの関心が高まり、具体的な改善案が生まれやすくなります。
こうした取り組みの積み重ねが、組織全体で省エネに取り組む風土づくりにつながります。
電力の見える化に取り組む際の課題
電力の見える化は多くのメリットがある一方で、導入や運用の過程で注意すべき課題もあります。
初期費用や導入コストがかかる
電力の見える化に取り組む際は、センサーや計測装置の設置費用に加え、IoT機器やシステムの導入費用も考慮する必要があります。
また、導入後もシステムの運用や保守に関する費用がかかる場合があります。費用対効果を十分に検討せずに導入すると、期待していた効果を実感しにくくなる可能性がありますので、注意しましょう。
そのため、最初から全体導入を目指すのではなく、消費電力の大きい設備や重要な工程に絞って導入することが重要です。
見える化すること自体が目的化してしまう
データを取得してグラフを表示するだけでは、電力使用量は減りません。数値を見ることと、改善につなげることは別です。 目的があいまいなまま導入すると、データを確認するだけで満足してしまい、具体的な行動に結びつかないケースも見られます。こうした事態を防ぐためには、導入前に「何を改善したいのか」「どの指標をもとに判断するのか」を明確にしておくことが重要です。
電力の見える化を依頼する際の業者選びのポイント
電力の見える化を依頼する際の業者選びのポイントを紹介します。
製品のラインナップが豊富な業者
計測装置やセンサーの種類が豊富であれば、設備や用途に応じた柔軟な提案を受けやすくなります。将来的に監視範囲を拡大したい場合や、電力以外のエネルギーも管理したい場合にも対応しやすいです。最初は小規模から始め、段階的に拡張できるかどうかも確認しておくと安心です。
渡辺電機工業では、計測制御機器や、EMSや設備監視で使用する電力計やリモートI/O、可視化アプリまで、豊富な製品を取りそろえております。
設計・開発から販売まで一貫した技術力を持つ業者
計測装置やシステムは、単体で導入すれば終わりではなく、現場環境や運用方法に合わせた設計が欠かせません。一貫した体制を持つ業者であれば、要件整理から構成設計、導入後の調整までスムーズに進めやすくなります。
また、製品仕様やシステム構成を深く理解しているため、トラブル発生時の対応も迅速です。一社で完結する体制が整っていれば、長期的な運用においても安心感があります。
長い実績と導入経験がある業者
電力管理の現場では、業種や設備構成によって課題が大きく異なります。多くの導入実績がある業者ほど、過去の事例をもとにした現実的な提案を受けやすくなります。
また、導入事例が豊富であれば、自社と似た規模や業種のケースを参考にできることもメリットの一つです。長年にわたって製品やサービスを提供している業者は、継続的なサポート体制が整っていることが多く安心です。
自社工場で生産・品質管理まで行う業者
電力の見える化を支える計測機器やシステムは、長期間安定して使用することが前提となります。そのため、自社工場で生産から品質管理まで行っている業者を選ぶことも重要なポイントです。
製造工程を自社で管理していれば、品質基準が明確になり、製品のばらつきや不具合が起こりにくくなります。また、万が一トラブルが発生した場合でも、原因の特定や改善対応を迅速に行いやすくなります。部品供給や修理対応が長期にわたって安定していることも安心材料です。
まとめ
電力の見える化は、エネルギー使用状況を数値やグラフとして「見える化」することで、省エネやコスト削減につなげる取り組みです。
手作業による管理から、計測装置やIoTによるデータ収集、そしてシステムで統合して分析するEMSまで、目的や規模に応じた方法があります。見える化によって無駄な電力使用を減らせるだけでなく、環境配慮のアピールや現場の意識改革にも効果が期待できます。
導入にあたっては初期費用や目的の明確化などの課題もありますが、段階的な進め方や効果検証を行うことで、省エネ効果を高めることが可能です。
渡辺電機工業では、導入前の提案からアフターサポートまでを一貫して支援し、電力・エネルギーの見える化を提供しています。計測器の専門メーカーとして、豊富な製品ラインアップと長年の実績がありますので、ぜひご検討ください。





